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回数
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内容
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授業運営方法
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事前学習・事後学習
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時間(分)
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第1回
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【生物多様性と自然史】 生態学の起源から現代までを展望する。自然界の複雑さを理解し、生物の相互関係を探求する生態学の基本概念を概説する。生態学では、個体群、群集、生態系などのレベルで生物の研究を行うが、環境問題の増加にともなって、環境科学としての側面もより重要になってきた。
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対面講義
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第1回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第2回
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【生態学:その領域と方法】 生態学は様々な時間・空間スケールでの生物の相互作用を研究する:すなわち、ウナギの数千kmの回遊や体内の小さな微生物群集の動態、数十年のフィンチの嘴のサイズの進化、数百万年間の個体数変動などである。自然現象に疑問を持ち、考え、議論するために、仮説の構築から検証、パラダイムの変遷まで、生態学の科学としての方法論を解説する。
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対面講義
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第2回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第3回
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【環境の中の生物:自然淘汰と適応】 多様な生態学現象の背景には生物の進化がある。生物の生存と繁殖における自然淘汰と適応の概念を説明する。ダーウィンが人為淘汰やガラパゴス諸島で得た進化理論の洞察は、自然淘汰と遺伝の関係をメンデルの遺伝から集団遺伝学へと結びつけられ、より理論的に整備された進化学となった。Hardy-Weinberg平衡や適応戦略の理論的考察も行う。
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対面講義
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第3回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第4回
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【出生、死亡、移動】 個体群動態の基礎となる出生、死亡、移動の基本的理解を理論と実例から紹介し、生物が指数関数的に増加する傾向を持つことを学ぶ。実際の生物の動態を理解するには調査が必要であるが、調査で用いる個体数推定法の除去法や標識採捕法を紹介する。また、実際のデータからFisherの性比理論を検証するなかで、統計検定の枠組みも学ぶ。
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対面講義
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第4回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第5回
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【資源競争と個体群動態】 資源競争が個体群の動態に与える影響を学ぶ。競争による密度依存的な生殖率や死亡率の変化をロジスティックモデルを導入して理解する。ロジスティックモデルから人の世界人口の動態パターンの理解や将来予測を行うことができる。また、消費型競争による理想自由分布や干渉型競争によるなわばりの形成などは適応行動から理解することができ、個体群の動態や分布に影響を与えることを説明する。ESS理論についても触れ、儀式的闘争が生物種の利益のためでなく個体の利益に基づいて説明できることを理解する。
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対面講義
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第5回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第6回
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【生活史戦略】 生活史戦略とは生物の形質の組み合わせのことであり、どんな大きさの卵を産むか、いつ繁殖するかなどは、進化の結果として適応の観点で理解できる。生物の制約から生活史戦略にはトレードオフがあり、生物が様々な生活史戦略をとることが適応から説明される。前回の補足として、個体群の時空間的変動のパターンを説明する。環境が一定であっても個体群変動は起こりうることや、カオス変動について学ぶ。
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対面講義
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第6回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第7回
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【生物の表現型と環境】 生物の表現型(形質の組み合わせ)は、遺伝と環境の相互作用から決まる。自然淘汰は表現型に対して作用することから、環境(生物・非生物)に対する表現型の可塑性が適応進化において重要となる。まず、質的な形質と量的な形質の遺伝学を概説し、表現型への環境の影響を説明していく。表現型の可塑性を分析する反応基準解析、表現型の可塑性の進化条件についても学び、表現型の可塑性の生物間相互作用への影響も説明する。
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対面講義
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第7回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第8回
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【捕食と病気】 捕食と病気は、一方の種が一方的に不利益を被る種間相互作用である。進化適応を背景とした最適採餌理論は、効率的に捕食を行う捕食者の行動をよく説明する。餌生物と捕食者の相互作用が両者の個体群動態に振動傾向をもたらしうること、空間構造は捕食に影響を与えること、頻度依存的捕食が複数の被食者の共存を可能にすることを学ぶ。病気の流行のモデルも説明する。群集内の相互作用では捕食と競争の複雑な相互作用が群集の状態を変化させることも学ぶ。
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対面講義
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第8回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第9回
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【生物間相互作用と共存】 競争・捕食・共生などの生物間の相互作用の結果として、同所的に複数の種が共存できるかが決まってくる。しかし、自然淘汰によって環境に適した個体が子孫を残しやすいという「適者生存」の自然のなかで、複数の種が共存し、さらには多様な生物多様性が維持されているメカニズムは必ずしも自明ではない。生物多様性に関する事実を踏まえた上で、比較的単純な種間相互作用のシステムの実験や理論から共存を可能にするメカニズムを学ぶ。
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対面講義
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第9回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第10回
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【生息地の分断と絶滅】 歴史スケールでの絶滅速度と比べると、人為的な影響による最近の絶滅速度は1,000倍以上と推定されている。生息地の分断化はその原因の一つである。講義では絶滅のプロセスをモデルから説明したうえで、生息地の分断化の絶滅への影響について、種数-面積曲線、島嶼生物学からの洞察、エッジ効果、メタ個体群を説明しつつ学んでいく。自然保護区のデザインや気候の地理学と種の多様性の世界的パターンも生息地の分断と絶滅のプロセスから理解できる。
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対面講義
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第10回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第11回
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【生物群集の構造と安定性】 生物群集の構造は、その安定性に影響を与える。群集内の生物間相互作用について、直接効果と間接効果について学んだ上で、イエローストーン国立公園のオオカミ導入事例などから栄養段階カスケードについて理解する。実験的に種を取り除くことで群集内の相互作用の強さを調べることや、キーストン種、基盤種、生態系エンジニアリング種について理解する。群集は撹乱を受けてその構造を変化させるが、その安定性のパターンについて理論・実験の知見を学ぶ。
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対面講義
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第11回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第12回
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【種の豊かさのパターン】 種の豊かさとは、ある地域の種数のことであるが、時空間的に変動しうるものである。種の豊かさのパターンについて、生態的ニッチを理解した上で、MacArthurの基本的なモデルやHutchinsonの多次元ニッチとバイオトープから理解していく。一次生産、種間競争、地理的勾配など種の豊かさと相関があり、影響を与えうる要因について学ぶ。種の豊かさと均等度から計算される種多様性の多様度指数(Alpha, Beta, Gamma diversity)についても学ぶ。
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対面講義
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第12回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第13回
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【生態系におけるエネルギーと物質の流れ】 生態系では、エネルギーと栄養塩が一次生産者によって取り込まれ、食物連鎖を通じて消費者に伝達される。純一次生産量は生態系の生産性を示し、陸域や海洋の生態系で温度や降水量によって変化する。物質の流れは生物学的、化学的、地質学的な過程によって起こり、窒素や炭素の循環などが生態系の機能に重要な役割を果たす。温暖化ガス削減に向けた取り組みへの科学的な理解の応用についても触れる。
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対面講義
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第13回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第14回
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【野生生物管理】 野生生物管理は漁業のような生物資源の利用を含むが、世界の漁業資源が減少し、乱獲が進んでいる状況が懸念されている。資源管理についてロジスティックモデルに基づいた漁業モデルを紹介しつつ、資源管理の本質を説明していく。大規模農業における病害虫の発生問題が引き起こした飢饉についても触れ、対策のひとつとしての生物的防除を解説する。天敵導入や不妊虫放飼などの成功例を紹介しつつ、成功例ばかりではないことも説明する。
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対面講義
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第14回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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第15回
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【環境問題と生態学】 科学である生態学は環境主義ではないが、環境問題と生態学は密接に関連し、環境問題に対する科学的理解を提供し、解決策を提案するものである。予防原則や生物保全の重要性が強調され、レッドリストや絶滅リスク評価が行われている。生態学からは、個体群動態のモデリングや絶滅リスク評価など具体的な科学的提言が行われ、環境問題の解決に貢献している。
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対面講義
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第15回の資料について事前学習・事後学習を行う
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授業90+予習復習270分
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