生態学は環境と生物の相互作用を研究する学問分野である。自然は進化的な時間スケールで形成された複雑なシステムであり、その驚くべき性質を理解することは基礎科学としての使命である。生態学の対象とする階層は広く、進化適応を背景に、個体の形質・個体群動態・種間の相互作用などを科学的に理解することを目指している。生態学では、単に自然史 (natural history) 的な観察を行うのではなく、数理モデルや統計学的手法を土台として、実験的手法や野外調査を行い、科学的な取り組みとして総合的に対象を理解する分野である。また、環境破壊と生態系サービスの減少が大きな社会問題となっていることから、現代の生態学は生物保全への応用科学としての側面も持ち合わせた学問へと変貌してきた。教養課程での本講義では、環境問題への応用にもバランスよく触れながら生態学の基礎について、理論と実践を交えた講義を行う。
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